理事長からの食品表示便り -加工食品の原料原産地表示基準の審議動向- |
前回は、本年3月に消費者委員会食品表示部会(以下「部会」)に諮問された加工食品の原料原産地表示に関する基準案の審議状況をご報告させていただきました。
諮問案については、第39回部会で審議されたのに続き、6月8日に第40回部会では、4月に収集した基準案に関するパブリックコメントの結果も踏まえて審議されました。
同部会では、総論の議論ではなく、各論について議論することとし、具体的には、下記の13項目について、4分野に分けて、意見を求めることになりました。
・例外表示(@可能性表示、A大括り表示、B大括り表示+可能性表示、C製造地表示)
・D誤認防止策、Eおにぎりののり、F業務用加工食品、G業務用生鮮食品
・H監視体制、I普及・啓発、J国際整合性関係、Kインターネットによる表示
・L経過措置期間
また、参加委員全員の意見・疑問状況を確認したいため、L経過措置期間を除き、原則として「順番に発言するスタイル」が取られました。
なお、時間の関係上、6月8日に委員間での議論まで行うことは難しいため、委員間の議論は今回の意見状況を踏まえる形で、次回の6月29日行うことになりました。
ただし、経過措置期間については、6月8日の部会での議論を踏まえて消費者庁が案を作成し、6月29日の部会に提出することになりました。
1. パブリックコメントの結果
3月27日〜4月25日の間に、電子メール、ファックス又は郵送にて意見募集したところ、8,715件の意見が集まりました。これは、食品表示法に基づく食品表示基準案が第3次消費者委員会に諮られた際の約4,300件や食品表示一元化検討会の中間論点に対する意見の約1,000件に比べてきわめて多い数で、国民の関心が高いことが分かります。
なお、8,700件のうち、約3,000件がおにぎりののりに関する賛成意見で占められていました。
ところで、パブコメは意見の数を評価するのではなく、意見の内容を重視するもので、現場での実態や基準案設定の際に気が付いていなかった点などが有効な意見となります。
意見は多岐に亘りましたが、主な内容は以下の通りです。
「→」は、意見に対する消費者庁としてのコメントです。
◎総論
【改正案に賛成】<同意見542件>
・消費者にとって必要な情報が提供されるため
・消費者に十分な情報を開示し、自主的かつ合理的な選択を可能とするため
【改正案に反対】<同意見85件>
・例外表示の導入により、現実の表示レベルが後退し、混乱することが予想されるため
→可能性表示や大括り表示、中間加工原材料の製造地表示を行うことで、原料原産地表示の実行可
能性が確保され、今まで対象とされていなかった加工食品について、新たに原料原産地情報が提供されるため、 消費者にとっては合理的に商品を選択できることとなり、メリットが大きいと考えています。なお、新たな食品表示制度について消費者への普及啓発のために分かりやすい資料を作成し、説明の場も積極的に設け、理解促進を図ります。
◎酒類の表示
・原材料名表示が義務付けられていない酒類について、原材料名表示が必要になるのか
→重量割合上位1位の原材料の原料原産地名については、食品表示基準の別記様式一に従い記載する必要があるため、重量割合上位1位の原材料について原料原産地表示をすることとなります。
◎可能性表示
・可能性表示について、再検討すべき。<同意見17件>
(理由)いくら過去の実績を書いても、手元の商品と違うことがあるのであれば、全く意味がなく、かえって情報が余計に分かりにくくなり混乱するため
→消費者庁と農林水産省が共同で開催した「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」において、10回にわたり消費者、事業者、生産者及び学識経験者方に各々の立場から御議論いただき、取りまとめられた「中間取りまとめ」を踏まえ、改正案を作成・提示しています。
◎可能性表示及び大括り表示
・消費者は国名を知りたいと望むことから、原料原産地表示は「国別重量順表示」での表記を原則とし、「大括り表示」、「大括り表示+可能性表示」はやむを得ないときの表記とすること。<同意見2件>
・可能性表示及び大括り表示について、国別重量順表示が困難と認められない場合の具体例を提示してほしい。<同意見1件>
→原料原産地表示は、国別重量順表示が原則です。@可能性表示は、原材料の過去の一定期間における産地別使用実績等からみて、国別重量順表示を行おうとした場合に、表示しようとする時を含む1年で重量順位の変動や産地の切替えが行われる見込みで国別重量順表示が困難な場合に、A大括り表示は、原材料の過去の一定期間における産地別使用実績等からみて、国別重量順表示を行おうとした場合に、3以上の外国の産地表示に関して、表示しようとする時を含む1年で重量順位の変動や産地の切替えが行われる見込みで国別重量順表示が困難な場合に、これらの表示を行うことができます。
・可能性表示や大括り表示は意味がない。<同意見46件>
(理由の例)3以上の外国の産地表示を「輸入」と「国産」を「又は」でつなぐと、結局どこの原産地か全く分からない。
→可能性表示は、国別重量順表示が困難である場合にのみ認められる表示で、過去の使用実績等から見て使用する予定の国を「A国又はB国」と「又は」でつなげる表示方法です。この表示が付された商品には、「A国」又は「B国」のみの原料が使用されており、「A国」と「B国」以外の国の原料は使用されませんので、どこの産地のものかの特定がおおむね可能です。また、大括り表示は、過去の一定期間等において、3以上の外国の産地を「輸入」と括って表示する方法です。この表示が付された商品には、3以上の外国の産地のものが使用されており、その多いものの順番を特定することができないということが分かります。
さらに、大括り表示+可能性表示は、3以上の外国の産地を「輸入」と括って表示した上で、国産と外国の産地の多いものの順番が特定できない場合にのみ認められる表示で、過去の使用実績等からみて使用する予定の国を「国産又は輸入」と「又は」でつなげる表示方法です。この表示が付された商品は、過去の使用実績等からみて多い方が先に表示されます。
このように、可能性表示や大括り表示を行うことで、原料原産地表示の実行可能性が確保され、今まで原料原産地表示の対象とされていなかった加工食品について、新たに原料原産地情報が提供されるため、消費者にとっては合理的に商品を選択できることとなり、メリットが大きいと考えます。
◎使用実績・使用計画
・可能性表示及び大括り表示における使用実績の期間については、3年前単年も許可してほしい。<同意見11件>
(理由) その過去データの蓄積・管理と包装フィルムの改版タイミングを考えると、運用が困難な局面が想定されるため。
→可能性表示や大括り表示の根拠となる一定期間の範囲のうち、「使用実績の根拠を1年とする場合、製造年から3年前の1年は不可」とすることについては、見直す方向で検討します。
→同部会において、消費者庁から3年前の1年も可とする修正案が示されました。
◎製造地表示
・国産品は国内で製造されているので、その原材料は明らかなはずであり、「国内製造」ではなく「国内工場製」という用語と併せてその原料原産地も表示すべき。
→中間加工原材料について、生鮮原材料まで遡って原産国を特定させることは困難であり、また、中間加工原材料についてもそれがどの地域、国で製造されたかの情報は、消費者の選択にとって有用な情報であると考えられるため、事業者の実行可能性を踏まえ、対象原材料が中間加工原材料である場合には、製造地表示を基本とすることとしています。
◎経過措置の充実
・経過措置期間として、施行後5年ほしい。<同意見117件>
(理由)動きが悪い商品については既に新表示への移行を実施しており、平成32年3月末までとする
改正案では、包材の廃棄や再商談等、無駄な経費が掛かる。
・経過措置期間は実行可能性を考慮して、施行後4年とすべき
(理由)公正競争規約の改正が行われることをスケジュール的に勘案する必要がある。
→経過措置期間については、現在の改正案の更なる見直しが必要かも含め、消費者・食品事業者等多くの御意見を踏まえた上で、慎重に検討してまいります。
2.第40回部会(6月8日)に消費者庁より示された変更案
第40回部会では、以上のパブコメ意見も踏まえ、第39回の部会で示された基準案について、以下の4点の変更点が提示されました。
(変更点1)「可能性表示」の呼称について、「又は表示」という呼称も使用することとする。
(理由) 「可能性」という言葉により、表示されている産地以外のものが使用されているかもしれないと消費者が誤認しないよう、「又は」でつないでいる産地のみを使用していることを明確にするため、「又は表示」という呼称も使用することとする。
(変更点2) 過去の産地別使用実績の期間の取り方について、「製造年から3年前の1年」も可とする。
(理由) パブコメにおける「過去データの蓄積・管理と包装フィルムの改版タイミングを考えると、運用が困難な局面が想定されるため、3年前単年も許可してほしい。(例えば平成29年春に製造する製品について考えてみると、前年である平成28年の実績を使用することは不可能なので、3年前がダメ、ということは、必然的に平成27年の実績しか使用できないことになる。)」等の意見を尊重。
出典:「食品表示基準改正のポイント」(平成29年3月)の変更点について
(平成29年6月8日 消費者庁)より
(変更点3) 経過措置期間について、見直しを検討する。
(理由)パブコメにおける「経過措置期間として施行後5年間(平成34年夏まで)必要。動きが悪い商品*については既に新表示への移行を実施しており、平成32年3月末までとする改正案では、包材の廃棄や再商談等、無駄な経費が掛かる。(*「動きの悪い商品」は、包材の切替え間隔が長期となる。)」、「経過措置期間として、平成32年3月末から、あと1〜2年ほしい。原料原産地対象商品が多く、調査・システム対応・切替えなどを段階的に交換する必要。」、「現行の食品表示法の経過措置期間も合わせて延長してほしい。」等の意見を尊重。
(変更点4) 積極的な普及・啓発活動に加え、表示制度の理解度調査を実施する。
(理由)パブコメにおける「例外規定が設けられたことは、実行可能性を担保する観点からやむを得ないものと考えるが、今後、新たな基準の周知を事業者だけに委ねず、国においてしっかりと対応してほしい。」等の意見を尊重。
こうした提案に対して、委員から様々な質問や意見が出されましたが、第40回部会(6月8日開催)では事務局からの回答はせず、次回41回(6月29日)にまとめて消費者庁や農林水産省(監視関係)から説明することになりました。
3. 第40回部会(6月8日)における主な意見
各委員から各種の意見が出されましたが、やはり「例外表示」に関するものが最も多い結果となりました。
(1) 例外表示(可能性表示、大括り表示、大括り表示+可能性表示、製造地表示)
◎例外表示に関して
- 原則である国別重量順表示が想定より少なく、例外表示が増えた場合、消費者が正しい情報を得にくくなるのではないかという懸念がある。例外表示が増加しないことがどの程度担保されるのか。
- 例外要件の定義は、今後作成されるQ&A等に託されている部分が非常に多い。現時点では、国別重量順表示が困難な場合というのは、誰が、何を、どうやって判断していくのか、保管すべき根拠書類というのは結局何なのか、十分見えていないので、当部会の審議に対して、可能な限り明確に提示してほしい。
- 過去を実績として使用できるのは今後の使用見込みと合致している場合であることや、これにもし当たらないのであれば、結果的に使用計画に基づく表示しかできなくなると理解してよいかといった、制度に従う場合の重要な確認ポイントを現段階で詰めることが必要。
- いろいろな議論を踏まえて「全ての加工食品を義務化」という前提の中で、この基準案になっている。
義務化は言うまでもなく規制であり、違反すれば罰則もあるので、一部の事業者だけが対象になる、あるいは一部の事業者が対象外になるといった不公平性がないことを前提にしないと、制度が成り立たない。検討会では、規制の公平性という観点に立った上で、事業者が知り得る情報を実行可能な範囲で消費者に大限提供するという前提で、例外表示も入れることになった。「国産又は輸入」もルールを理解さえすれば一定期間を通じて、少なくとも輸入品よりも国産のほうが多いとか、輸入も3カ国以上だということがわかるので、そういう観点での基準案になっていることを理解してほしい。あくまでも国別重量順が原則で、例外的なものも非常に厳格な条件のもとで可能という位置づけの制度である。
◎過去の産地別使用実績の期間の取り方に関して
- 消費者庁の修正案のとおり、製造年から3年前単年も使用実績として利用可とすることは賛成
- 3年前単年も利用可であれば、過去実績の年度を表示した場合の改版が2年に一度で済むことになり合理的。3年前単年の利用ができないと毎年改版することとなるが、包材メーカーの対応状況から考えても物理的に大変困難であるため、毎年改版する状況は回避すべき。
- 製造から何年も前の実績を使い続けることには違和感があるが、製造年から3年前の1年間の実績利用をあえて不可とすると、事業者の具体的運用が相当に窮屈になり得るので変更する必要性が高いという意見については、一定理解ができる。
◎産地別使用計画に関して
- 通常、改版作業ではデータ収集から改版まで3カ月〜6カ月かかるため、計画を利用するしかない新製品の場合、製造開始1年後を見据えた改版準備段階(製造開始後6か月〜9か月経過時点)では、過去実績が1年に満たないこととなる。この場合、再度、使用計画に基づいた表示(計画年の部分のみを変更)を行うための改版準備を行うことになるが、そのような改版は消費者も事業者も望むところではないと思う。計画期間が1年だと、計画から実績への切り替えが難しい。計画期間を2年としてほしい。
- 計画期間を現行案のまま1年とするにしても、使用計画期間の翌年も使用予定の原産国が変わらない場合は、初年度の表示をもう一年使用できることにしてほしい。例えば、「○○の産地は平成29年6月から1年間の使用計画の順に基づき表示」に続いて「翌年の使用計画に変更がない場合は、継続して使用案内をします」などの注釈を入れることによって、最大1年間に限り継続して使用できるようにしてほしい。
- 製造開始日から1年以内というのは、実行可能性を考えたときに非常に厳しそうであると思うので、2年以内に延ばしたほうが良い。
◎例外表示の注意書きに関して
- 可能性表示や可能性表示+大括り表示の注意書きに「前年の使用実績順又は一昨年の使用実績順」があるが、何の前年なのか消費者が表示から読み取れないため、選択肢から外すべきである。消費者が表示から読み取れる「賞味期限の○年前の使用実績順」等のほうが良い。
◎製造地表示に関して
- 中間原料の原産地が判らない場合があるので、製造地表示は必要。
- 現在、消費者とのフリーダイヤル等でのコミュニケーションにおいては、生鮮品以外の中間加工品の原産国を聞かれた際には、加工地で返答を行っているが、その方法でおおむね消費者の方々には御理解いただいているように思う。よって、製造地表示で問題はないと考える。
- 現在の顧客応対の際に、可能性や製造地表示で答えていることは間違いないが、製品に断定的にその情報が表示された場合と、顧客の懸念に沿って丁寧に説明することは、全く質が異なるという意味で懸念がある。
- 「国内製造」と「国産」との違いを消費者教育で理解してもらうのはかなり難しい。「国内製造」という言葉が国産品と誤認される可能性は極めて大きいと思うので、「国内製造」は、「国産」と間違えられないような、違う言葉のほうが良い。
◎根拠書類に関して
- 実行可能性の観点から、根拠書類の「定義」が余り厳しいものになると、書類が多岐にわたり保管が難しくなるので、実行可能性をしっかりと検証してから、根拠書類はどうあるべきかを決めてほしい。
◎「可能性表示」の呼称に関して
- 可能性表示はその表示の敗北だと思うので、呼称としては「可能性表示」より「又は表示」のほうがいい。ただし、日本語の「又は」では制度上の意味するところである And orには受け取られない可能性があるため、もっと適当な表現がないか、更に検討が必要。
- 可能性表示の代称をあえてつくるのであれば、むしろあらゆる可能性ではないということを伝える目的で、「使用実績に基づく表示」や「使用計画に基づく表示」はどうか。
◎表示の順番に関して
- アレルゲンの表示は健康状態に関係する部分なので、義務表示を並列する場合は、一番初めに判りやすく書くルールにしてほしい。
(2) 誤認防止策、おにぎりののり、業務用加工食品、業務用生鮮食品
◎誤認防止策
- 使用割合が極めて少ないことを示す「5%未満」の表示は、可能性表示だけでなく国別重量順表示や大括り表示にも適用すべき。
- 以前に「国別重量順表示で5%未満の表示をすると、割合が変わる度に5%未満か否かで改版が必要となるため、割合表示はできない」と説明されたが、枠外に印字で表示すれば、表示は可能ではないか。
- 「その他」が5%未満であった場合に、5%未満と表示する必要はないと今回説明されたが、本当に必要性がないと言ってしまってよいかどうか、現時点では自分の意見がまとまっていない。
- 少量使用した場合の(5%未満)という6文字を枠内に入れるとなると、情報量の割に文字数をとるという印象をもつ。枠外に出すことや、略語で示すなどの工夫ができると良い。
◎おにぎりののり
- 今回、のりを使う食品で表示義務を課す範囲を「おにぎり」に限定する理由をもう一 度説明してほしい。
- パブコメへの意見をみて、おにぎりののり以外にも同様に俎上に上がる可能性があるものがあるかもしれないと思った。今後、可能性があるのか否か、見解をききたい。
- 「のり(国産)」の表示は、他の表示と整合性をとるため「のり(原そう(国産))」 にすべき。
◎業務用加工食品、業務用生鮮食品
- B to Bの事業者は、供給した製品が供給先で加工食品1位になるかを把握できるのか。また、中小の事業者が実際に原料の産地の情報を正確に把握し得るのかといった 実行可能性について、しっかり把握して進めてほしい。
(3) 監視体制、普及・啓発、国際整合性、インターネット表示
◎監視体制
- 可能性表示自体を否定するものではないが、可能性表示は使用可能性がある複数国を、 過去の実績や使用計画に基づいて正確に表示して初めて活用できるものである。正確に表示されることが監視でどの程度担保されるかが気になる。
- 監視が非常に困難な制度。善意の事業者の単純ミスばかりが目立ち、故意にこの制度を悪用するような事業者がすり抜けてしまうことのない監視体制をどうつくるかを、ぜひより深く検討してほしい。
- 資料には、食品工場に関する立ち入り調査の例として、無通告で立ち入り調査することが、非常に簡単な形のフローで書かれている。実際に監視指導を行う農政局や地方自治体は、この状況をどの程度承知しているのかを、それらの機関の意見も含めて教えてほしい。
- 現在と同様の監視体制でこの制度の監視を行った場合、今回の消費者庁の説明どおりに、適切に運用できていることを制度開始後にどのようにチェックすることができるか。運用が適正に行われていることを外部からチェックできるかを確認したい。
- 最終製品の製造業者は、業務用の加工食品業者の情報を信じて最終的な表示を作成せざるを得ない。このため、業務用加工食品の工場といった、前段階での監視をしっかりと行ってほしい。また、万が一、仕入先から間違った情報が届き、最終製品の製造業者が結果として誤った表示をしてしまった場合の対応策を考えてほしい。
- 事業者がルールを守りやすくするためにも、例外等の要件を、少なくともQ&A等でできる限り明確にしておくこと必要がある。根拠書類の保管についてもできる限り明確にすべき。
◎普及・啓発
- 原料原産地表示の導入は、消費者の利益を最大化していくことが根底にあり、それに向けて事業者の努力が結実していくという制度である。よって、消費者がこの制度を十分に理解することも重要である。単なる普及・啓発の運動をやって終わりではなく、その成果がどこまで消費者に浸透しているかの定点観測を行い、成果を形にしてほしい。
- 消費者意向調査を昨年度から始められているとのことだが、ぜひ毎年継続してほしい。調査結果は公開し、適切に制度にフィードバックしてほしい。
- 消費者意向等調査では、理解度とあわせて活用度、満足度の調査も行うべきである。
- 制度が実効あるものになるかどうかは、消費者への普及・啓発にかかっている。効果判定や活用度判定もセットで行う必要があるが、普及・啓発は行政だけが行うのではなく、業界団体、消費者団体と連携して積極的に行ってほしい。
◎国際整合性
- WTO通報の状況を説明してほしい。その状況も踏まえて審議を行いたい。
- この制度は世界でほとんどまだ行われていない制度。制度導入後、事業者が原料の原産地を確認したいと外国に依頼するときに、一体、日本は何をやっているのかとならないように、各国にしっかり説明してほしい。
◎インターネット表示
- インターネットによる表示を補助的に活用することには賛成する。
- インターネットでの義務表示が可能になると非常にメリットが出てくるので、せめて原料原産地表示だけでもインターネット表示できないかと、以前から提案している。
- インターネットリテラシーの懸念から、義務表示は容器包装で行うことを本則とすることに賛成する。この制度においてインターネットによる表示を期待する意見の背景には、インターネットを用いることで、事業者から個々の加工食品の原料原産地について、より原則表示に近い正確な情報を提供してもらえるのではないかという期 待があると思う。しかし、現時点では、恐らく提供される情報が原則表示、徹底した国別重量順表示になる、あるいはそれにかなり近づくことは難しいと思うので、インターネットは補助的な役割とならざるを得ないと思う。
(4)経過措置期間
結論:加工食品の本制度の経過措置期間は5年程度が適当である。
(5) 基準案の経過措置第3条「従前の例によることができる」食品の範囲
・原案は酒類に限っているが、他の食品で同様の状況のものがないかが懸念される。
・果実酢には10年程度の長期熟成のものがあるので、該当すると思われる。
4. 第41回部会及び今後の進め方
第41回部会は、6月29日に開催されました。前回は、例外表示に関する意見が多かったこと、及びこの課題は監視体制や普及啓発の実行性ときわめて関連性があることから、議論を行う順番は、例外表示に関する議論を行う前に、監視体制や普及・啓発、国際整合性、インターネット表示について議論を行うこととなりました。すなわち、監視や普及・啓発などがどのような形でどのように行われるかで、例外表示をどう考えるかが変わり得るとの判断に基づくものです。
そして、各項目の議論の最後に、その項目に対する部会の見解を、意見状況を総括する形でまとめていくという趣旨です。このことは、この基準案に対する審議の一番後に答申書の記載内容を議論する予定ですが、その際の参考になるようまとめておく必要があるからです。
ただ、全項目を29日だけで議論することは極めて難しいことから、第41回部会では「監視体制、普及・啓発、国際整合性、インターネット表示、例外表示」に関する議論を行うこととなりました。
したがって、次回7月12日(予定)の第42回部会にも続きの審議がなされ、更に必要ならば7月中に第43回部会も開催されることになっています。これらの審議状況につきましては、一括して次回本マガジンにてご報告させていただくことにします。
<第41回部会(6月29日)における主な意見の方向性>
第41回部会における分野別の意見は主に以下の方向性が示されました。
◎監視体制について
現状の監視体制で加工食品の原料原産地表示についても監視を行うことは、判断基準が不明確な点が多く難しいのではないか。ただし、違反の判断基準は、事前の普及・啓発の時点で明確にする必要があり、その対応が適切であれば難しいとは言えないとの意見もありました。
◎普及・啓発
消費者庁の想定している普及・啓発については、一定の理解が得られたが、それは、消費者及び事業者に対する理解度、活用度及び満足度に関する定期的・客観的なモニタリング結果を踏まえて判断されるもので、その分析をきちんとすることが重要である。
◎国際整合性
現在、アメリカ、カナダ、オーストラリアから意見、質問が寄せられているが、今後各国に対して、引き続き丁寧な説明を続けていくことが必要である。
◎インターネット
インターネットの活用については、積極的に対応すべきとの意見が多かったが、高齢者に対するリテラシー等を考慮した場合、現時点では補助的扱いとし将来へ向けての活用を検討することが適当である。 なお、パブコメ結果等の詳細につきましては、消費者委員会のHPである下記を参考にしてください。
http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/bukai/040/shiryou/index.html
-分かりやすい表示と情報の重要性の整序- (平成29年4月30日)
-加工食品の原料原産地表示に関する食品表示基準改正のポイント- (平成29年3月30日)
-若年層における食品表示教育の現状- (平成29年3月1日)
-食品表示制度と食育政策- (平成29年2月1日)
-新年のご挨拶 新たな食品表示基準等への対応の年に- (平成29年1月1日)
-加工食品の原料原産地表示制度に関する検討状況(中間取りまとめ)- (平成28年11月30日)
-加工食品の原料原産地表示制度に関する検討状況(2)- (平成28年10月31日)
-加工食品の原料原産地表示制度に関する検討状況(1)- (平成28年9月29日)
-「理事長からの食品表示便り」コーナーの創設に当たって- (平成28年9月1日)