理事長からの食品表示便り -加工食品の原料原産地表示制度に関する検討状況(中間取りまとめ)- |
前号に続き、加工食品の原料原産地表示に関する検討経緯につきましてご報告します。
第10回の消費者庁・農林水産省共催の「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」が11月2日に開催されました。
当日は、当該制度に関するこれまでの検討経緯を踏まえた中間取りまとめ案が検討された結果、一部修正を座長一任することを前提として、検討会としての中間取りまとめとすることが決まり、11月29日に公表されました。
同検討会は、平成28年1月29日に設置され、11月までの全10回にわたり議論を行ったことになりますが、その取りまとめの概要は以下の通りです。
T 中間取りまとめの概要
1. 今後の制度の基本的考え方
(1) 表示の必要性
消費者調査では、加工食品を購入する際、原料原産地名を参考にしている消費者は約77%に上ることから、消費者にとって商品選択をする際の重要な情報とされている現状にある。
このため、表示に当たっては、事業者の実行可能性を考慮しつつも、分かりやすさが求められ、全ての加工食品に共通する表示制度として検討。
一方で、インターネット等を通じた企業の情報提供の充実に向けた努力は、消費者の信頼を確保する上で重要。
(2) 商品選択時の有用性
消費者調査では、産地情報を入手する手段については、「食品に表示されている表示を確認」が約93%と最も多く、次いで、「ホームページを見る」が約18%となっていることから、原料原産地に関する情報提供方法については、消費者が商品選択時に役立つかどうかという視点も踏まえ検討。
(3) 実行可能性の確保
事業者の実行可能性については、頻繁な原材料の原産地の変更に伴う包材の切替え、煩雑な作業の発生等、事業者の負担について考えることが必要。また、単純ミスにより生じる食品回収の問題の発生等にも考慮が必要。このため、原料原産地表示の義務付けについては、義務付けの基準が客観的となるように、かつ、事業者の実行可能性に配慮し検討。
(4) 誤認防止への対応
食品表示による情報は、限られたスペースに多くの情報が表示されることから、それらの情報を消費者が正しく読み取れるかが重要。このため、分かりやすい表示に加え、消費者の誤認防止のための措置を考慮することが必要。
ただし、どのような表示方法であっても、消費者の誤認を全て防ぐことは難しいため、誤認防止の対応は、表示方法の工夫に加えて、消費者啓発が必要となってくるという視点も踏まえ検討。
(5) 国際貿易規格との整合性
コーデックス委員会が定める規格では、原料原産地表示に関する規定はなく、各国の裁量に委ねられている。外国の産品を差別的に取り扱うなどの不公平な制度でない限り、原料原産地表示の義務付けは問題ないと考えられる。また、現在に至るまで、我が国の原料原産地表示制度の導入及びその拡大について、国際的な問題となった事例はない。
なお、韓国では、原則全ての加工食品に原料原産地表示が義務付けられているほか、国産原材料の使用割合表示を義務付けているオーストラリア、一部の品目への原料原産地表示や、有機食品への農産物のEU域内外の原産地の表示を義務付けているEUなど、様々な形で原料原産地に関する表示を制度化している国・地域が見られる状況。
2.今後の表示の対象・方法
(1) 義務表示の対象
◎義務表示の対象となる加工食品及び原材料について、全ての加工食品について、重量割合上位1位の原材料の原産地を義務表示の対象に。
ただし、引き続き、以下の場合には、原料原産地表示を要しないこととすることが適当。
・ 食品を製造し、又は加工した場所で販売する場合、
・ 不特定又は多数の者に対して譲渡(販売を除く)する場合、
・ 容器包装に入れずに販売する場合、
また、容器包装の表示可能面積がおおむね30cm2以下の場合も省略可。、
義務対象原材料は、事業者の実行可能性も勘案し、製品に占める重量割合上位1位の原材料を義務表示の対象とすることが適当。なお、事業者が自主的に重量割合上位2位以降の原材料についても、原料原産地表示を行うことを妨げない制度とすることが適当。、
また、いわゆる「冠表示」は、食品表示法の定義はなく、新たに定義付けることも困難であるため、義務表示ではなく、国がガイドライン等を示すことにより普及していくことが適当。
(2) 義務表示の方法
◎ 「国別重量順表示」を原則とする。ただし、「国別重量順表示」が難しい場合には、消費者の誤認を防止するための方法を明確にした上で、例外の表示を認める。
基本的には、既に定着している現行の「国別重量順表示」の方法によることが適当。
具体的には、対象原材料の産地について、国別に重量の割合の高いものから順に国名を表示することを原則とするが、原産国が3か国以上ある場合は、現行ルールと同様、3か国目以降を「その他」と表示することができるとすることが適当。
(3) 義務表示の例外
対象原材料の産地については、「国別重量順表示」を原則としつつ、当該商品での「国別重量順表示」が難しい場合や、対象原材料が中間加工原材料である場合にも、しっかりとした条件付けの下で、実行可能な代替的な表示を義務付ける表示ルールを定め、いずれかの表示を行うこととすべき。また、その際、消費者の誤認が生じないよう適切な措置をとることも必要。具体的には、一定の条件を満たす場合には、過去の実績等を踏まえた「可能性表示」、「大括り表示」を認めるとともに、中間加工原材料についての表示は、当該中間加工原材料の「製造地表示」を認めることとし、消費者の選択に資する情報を含む表示を行うことを義務付けることにより、情報提供の範囲をできるだけ拡大することが適当。
ア 可能性表示(「又は」表示)
◎「国別重量順表示」を行った場合に容器包装の変更が生じると見込まれる場合には、過去実績等を踏まえた表示(可能性表示)を行うことができる。
(表示の方法)
「可能性表示」とは、使用可能性のある複数国を、使用が見込まれる重量割合の高いものから順に「又は」でつないで表示する方法であり、過去の取扱い実績等に基づき表示されるもの。現行の食品表示基準と同様、原産国が3か国以上ある場合は、3か国目以降を「その他」と表示することができる。
(認める条件)
「可能性表示」は、あくまで例外の一つ。対象原材料の過去一定期間における国別使用実績又は使用計画(新商品等の場合には今後一定期間の予定)からみて、「国別重量順表示」を行おうとした場合には、産地切替えなどのたびに容器包装の変更が生じ、「国別重量順の表示」が困難であると見込まれる場合に限り認めることが適当。
(誤認防止)
消費者の誤認が生じないよう、過去の使用実績等に基づく表示であることを原産国の表示とともに容器包装に注意書きするなど、明確な根拠を持った表示である旨の注意書きを付記させることが適当。
イ 大括り表示(「輸入」表示)
◎国別重量順表示を行った場合に、3以上の外国の産地表示に関して容器包装の変更が生じると見込まれる場合には、「大括り表示」を行うことができる。
(表示方法)
「大括り表示」とは、3以上の外国の産地表示を「輸入」と括って表示する方法。なお、輸入品と国産を混合して使用する場合には、輸入品(合計)と国産との間で、重量の割合の高いものから順に表示。
(認める条件)
「大括り表示」も、あくまで例外の一つ。対象原材料の過去一定期間における国別使用実績又は使用計画(新商品等の場合には今後一定期間の予定)からみて「国別重量順表示」を行おうとした場合には、3以上の外国の産地表示に関して、産地切替えなどのたびに容器包装の変更が生じ、「国別重量順表示」が困難であると見込まれる場合に限り認めることが適当。
「大括り表示」については、外国の産地国名が表示され、国産原料か外国産原料かは明確であり、少なくともこの情報を知りたい消費者にとり有意な表示。なお、外国の産地が2か国までの場合は、「大括り表示」は認められない。
ウ 大括り表示+可能性表示
◎ 「大括り表示」を用いても容器包装の変更が生じると見込まれる場合のみ、「大括り表示+可能性表示」を行うことができる。
(表示方法)
「大括り表示+可能性表示」とは、過去の取扱実績等に基づき、3以上の外国の産地表示を「輸入」と括って表示できるとした上で、「輸入」と「国産」を、使用が見込まれる重量割合の高いものから順に「又は」でつないで表示できるとする方法。
(認める条件)
「大括り表示+可能性表示」は、対象原材料の過去一定期間における国別使用実績又は使用計画(新商品等の場合には今後一定期間の予定)からみて、「大括り表示」を行おうとした場合には、産地切替えなどのたびに容器包装の変更が生じ、「大括り表示」のみでは表示が困難であると見込まれる場合に限り認めることが適当。
(誤認防止)
消費者の誤認が生じないよう、過去の使用実績等に基づく表示であることを原産地国の表示とともに容器包装に注意書きするなど、明確な根拠を持った表示である旨の注意書きを付記させることとすることが適当。
エ 中間加工原材料の製造地表示
◎対象原材料が中間加工原材料である場合に、当該原材料の製造地を「○○製造」と表示。
(表示方法)
中間加工原材料の「製造地表示」とは、対象原材料が中間加工原材料である場合に、当該原材料の製造地を「○○(国名)製造」と表示する方法。ただし、中間加工原材料である対象原材料の原料の産地が判明している場合には、「○○製造」の表示に代えて、当該原料名とともにその産地を表示することができるとすることが適当。
(表示の必要性)
中間加工原材料は、生鮮原材料と同様に対象原材料そのものであることから、中間加工原材料の「製造地表示」は、ア〜ウで示された「可能性表示」や「大括り表示」などの「国別重量順表示」の例外としての位置付けとは異なる取扱いが必要。
(4) 義務表示に共通する事項
ア 誤認防止
新しい表示方法を導入するに当たり、誤認防止策を講ずることは、消費者が自発的かつ合理的に食品を選択する機会を確保するために重要。このため、使用割合が極めて少ない産地については、消費者の誤認が生じないよう、例えば、割合を表示する、又は○○産と表示しないなどの表示方法を講ずることが適当。
新しい表示方法について、消費者の正確な理解に資するよう、行政や関係者による説明会や勉強会の開催、事業者による消費者の疑問に対する自主的な対応など、国、事業者、消費者団体による消費者啓発が行われることを期待し、消費者も自ら積極的にそれらに参加することが求められる。
イ 表示媒体
消費者調査では、産地情報を入手する手段については、「食品に表示されている表示を確認」が約93%と最も多く、次いで、「ホームページを見る」が約18%となっていることから、消費者は産地情報の入手に当たって、容器包装の表示を参考としている場合が圧倒的に多い。また、特に高齢者などの中にはインターネットリテラシーが十分でない方もいることから、義務表示は容器包装への表示により行うことが適当。
なお、義務表示は容器包装への表示により行うものとするが、補足的にインターネットなどにより詳細な情報提供を行うため、事業者は自主的かつ積極的な情報提供に努めることが適当。
ウ 書類の備置き
事業者は、基本的に、自ら製造、販売等する食品に係る情報を記載した書類等を整備し、保存しているところであるが、例外表示の際に表示内容が正しいことを確認できるよう、過去一定期間の国別使用実績又は使用計画等の根拠となる書類の備置き等を必要とすることが適当。
(5) 現行の表示方法
既に原料原産地表示が義務付けられている22食品群と4品目の現行の表示方法は、原則による「国別重量順表示」で実施されており、消費者に対する情報提供のレベルを下げないようにする観点から、そのまま維持することが適当。
(6) おにぎりののり
おにぎりののりについて、のりは重量が軽く重量順1位の原材料にはならない。一方、おにぎりという国民食において、のりの原料原産地は、のり生産者の意向も強く、消費者の商品選択の上で重要な情報と考えられ、また表示義務付けの実行可能性があると見込まれることから、義務表示の対象とすることが適当。
(7) その他
ア 経過措置
今般の加工食品の原料原産地表示の在り方については、抜本的に改正が行われるため、今後着手する食品表示基準の改正に当たっては、パブリックコメント等により広く国民の声を聞くものとし、施行に当たっては、事業者の包材の改版状況も勘案して、十分な経過措置期間をおくことが適当。
イ 消費者への啓発活動の推進
今般、抜本的に加工食品の原料原産地表示制度が変わり、原則としては「国別重量順表示」であることを始め、認められる例外の表示についても、今後、消費者への啓発を行政及び関連する団体が相まって複層的に行うことが必要。
ウ 行政による監視
行政には、食品表示制度の適正な運用のため、引き続き、効果的かつ効率的な監視に努めることを期待。
U 議論の経過と今後の課題
以上、加工食品の原料原産地表示に関する検討会の中間取りまとめについてその概要を示しましたが、当該課題は、平成13年頃から幾多の議論を重ね、現在に至ったもので、きわめて重要で難しいテーマでありました。
食品表示に関する共同会議や食品表示一元化検討会においても、かなりの回数・時間をかけて来た経緯もあり、それらの事情も十分踏まえた議論がなされるとともに、消費者、生産者及び食品産業分野の実態等に関する調査やヒヤリングもなされ、各委員からの積極的な議論を経て、10回の検討会の結論として「中間取りまとめ」がなされた次第です。
これまでの議論では、特に以下の内容が課題となりました。
1 例外表示に関する誤認防止
(1) 「可能性表示」、「大括り表示」及び「大括り+可能性表示」
加工食品の原料原産地表示は、基本的には、消費者が、自主的かつ合理的な製品選択の際に役立てる情報として理解し活用されるものです。
したがって、消費者にとって分かりやすい表示でなければなりません。今回は、原則として国別重量順表示となっていますが、頻繁な原材料の変更に伴う包材の切替え、煩雑な作業の発生等による事業者の負担が大きく、実行可能性を確保することがどうしも困難な場合には「可能性表示」「大括り表示」及びその両者の組合せ表示や「製造地表示」を、あくまでも例外として認めることが適当とされました。
しかし、一部の委員からは、「可能性表示」及び「製造地表示」を認めず、例外的に「原産地不特定」との表示を認める案や、「国別重量順表示」が難しい場合には、表示しないとする案が示されたが、これらは、消費者にできる限り充実した産地情報を提供する制度とする観点と相反することから適当でないとされました。
前号で記した通り、個別の国名が表示可能な加工食品に限って義務化し、一部の事業者のみを規制することは、制度上成り立ちません。個別産地が分からなくても、輸入か国産かが分かるだけでも、消費者への情報提供という観点からは、一歩進んだことになります。
また、「可能性表示」について、商品と表示の内容が一対一で対応せず、消費者が誤認する可能性についても指摘がありましたが、原料原産地表示を求める消費者の要望に応え、原料原産地情報の提供を図っていくことを第一に考えた結果、消費者の誤認が生じないよう、過去の使用実績等に基づく表示であることを原産地国の表示とともに容器包装に注意書きするなど、明確な根拠を持った表示である旨の注意書きを付記させることで、誤認のリスクの低減を図ることとされました。
更に、「可能性表示」は、表示されている産地の原材料が全て使われているとは限らず、例えば、表示された国のうちの1か国のみが使われている場合もあります。しかし、使用可能性のない国名が表示されることはなく、表示された国名以外の原産国の原材料が使われることもありません。また、使用実績又は使用計画により、重量割合の高いものから順に産地を表示する必要があり、一定の期間を通じて、使用割合が高いと見込まれる原産国名が上位に表示され、逆に、使用割合が少ないと見込まれる原産国名は下位に表示されます。以上のことから、消費者の食品選択に当たり、有意な情報を提供する方法であるという取りまとめになっています。
一方、「大括り表示」については、外国の産地国名が表示されず、特定の国を知りたいという消費者のニーズに応えていない等の意見がありましたが、国産原料か外国産原料かは明確であり、少なくともこの情報を知りたい消費者にとり有意な表示であると考えられます。
「大括り表示+可能性表示」の場合も、「輸入又は国産」では全世界が原産地の対象で表示は無意味との意見もありましたが、@輸入国数が3か国以上、A「輸入」と「国産」が頻繁に変更されるといった有為な情報が示されます。また「輸入」と「国産」の表示順も、実績や計画に基づくという明確な根拠をベースとして、重量順というルールであることが理解されれば、有効な情報と判断されるとともに、EUにおける有機表示においても「EU/NON-EU AGRICULTURE」という表示制度があり、オーストラリアでも「from Local and Imported Ingredients」という表示がなされています。
(2) 「製造地表示」
「製造地表示」では、中間加工原材料の生鮮原材料の原産国が分からないとの意見や表示された製造地を中間加工原材料の生鮮原材料の原産国と誤認するとの意見がありましたが、加工食品は、同一品目の商品であっても、自社工場で生鮮原材料から一貫して製造している場合もあれば、他社工場で製造された中間加工原材料を使用して製造する場合もあり、その製造方法は多種多様です。
こうした中間加工原材料について、生鮮原材料まで遡って原産国を特定することは困難なため、仮に、生鮮原材料のみを義務表示の対象とした場合、市場には、同一品目の商品であっても、原料原産地表示がされているものと、そうでないものが混在することになります。また、生鮮原材料から一貫して製造している場合のみ義務表示の対象とすることは、事業者間の不公平感を生じさせるおそれもあります。
一方で、中間加工原材料は、それ自体が1つの加工食品であり、生鮮食品と同じように流通しています。食品表示基準では、輸入された加工食品については、製造された国名(原産国名)を表示することを義務付けており、加工食品の原材料である加工食品(=中間加工原材料)についても、それがどの地域、国で製造されたかの情報は、消費者の選択にとって有用な情報であると考えられます。
以上のことから、事業者の実行可能性を踏まえ、対象原材料が中間加工原材料である場合には、この「製造地表示」を表示させることとした上で、対象加工原材料の原料の産地が判明している場合には、当該産地を表示することを可能とすることとなっています。なお、「製造地表示」においても、製造地の「国別重量順表示」を原則とし、「製造地表示」での「可能性表示」や「大括り表示」の例外を認めることが適当であるとしています。
また、現在の表示制度において「○○加工」であれば生鮮原材料の産地を示すものではなく、表示可能であるとの整理が既になされています。
このルールは、「〇〇産」では原料の産地か製造地かのいずれかが不明という批判があったため、約10年前に「〇〇加工」であれば原料の産地と誤認されないと整理してQ&Aが発出されたものです。
本検討会では、表示方法として、当初、「○○加工」が検討されましたが、「加工」であれば、単なる切断や混合等を行った場合にも原産国として表示が認められることになりかねないため、更に厳格に、「○○製造」として、「製造」すなわち、その原料として使用したものとは本質的に異なる新たな物を作り出した場合に限り、その製造が行われた国を表示させることが適当であるとされました。
いずれにしても、「誤認防止」に関しては、今回の表示制度における重要な課題です。したがって、「取りまとめ」の関係個所(個々の例外表示箇所)全てにその重要性につき記されています。
2 冠表示及び原材料重量順1位対象
「たこ焼き」の場合、原材料の重量順第1位は「たこ」ではなく「小麦」であり、「ゆであずき」の場合は「小豆」ではなく「砂糖」であり、消費者が知りたい「たこ」や「小豆」の原産地が分からないとの意見もありました。重量順で2位、3位まで表示すべきとの意見も出されました。いわゆる「冠表示」については、前記のように法令上の定義がなされておらず、「鯛焼き」のように多岐にわたり、定義が困難なことも事実です。また、第2位までを対象とするか「第3位」までを対象にするかの場合にも、その根拠が必要となります。
したがって、まずは第1位のものを対象にし、制度化の状況等を踏まえて、更に追加すべきか否かを検討するという考え方に立った経緯があります。
ちなみに、韓国の場合は、2位、3位と順次対象となる原材料を追加していっています。
なお、「たこ焼き」や「ゆであずき」のような製品も、消費者が知りたいというニーズに応えて任意で表示することは有効です。したがって、これらについてはガイドラインにおいて対応を示すことが適当とされました。
また、使用原材料の重量順第1位がぶどう糖果糖液糖の製品も多くあり、これらにつき原産地表示をしても無意味との意見もありましたが、仮に他の製品も含め対象外とする基準を設定することは難しく、またぶどう糖果糖液糖自体どういうものかを理解できていない消費者もいるという予想も踏まえ、まずは原則第1位を対象とすることとしています。
3 パブリックコメント
今回の課題は、活用主体である消費者の理解はもとより、表示するサイドとしての事業者の実行可能性を十分把握した上で検討する必要があります。
そういう観点、検討会の取りまとめに当たって、広くパフリックコメントを求め、それらの意見を反映すべきとの意見も出されました。
このことにつきましては、事務局である消費者庁・農林水産省は、食品表示基準案の審議の際というコメントをしています。
過去の食品表示一元化検討会においては、検討会に意見を反映するため検討途中でパブリックコメントを求めましたが、この場合は中間論点に対しての意見収集でした。
いずれにしましても、意見を求めるからには、消費者及び事業者が今回提案されたルールを十分理解することが必須となります。そのためには、拙速な意見収集ではなく、国は、今後全国津々浦々まで、本取りまとめの内容を懇切丁寧に説明し、理解してもらうことを強く要望します。
4 消費者の理解度と活用度の把握
加工食品の原料・原材料表示に限らず、現行の義務表示事項全般に関して、消費者がどの程度理解し、活用しているかという理解度及び活用度の客観的実態把握を常に実施しておくことが重要です。
このことにより、特に安全性確保に関する表示事項については、的確な理解度・活用度アップにつながる普及・啓発施策に反映するとともに、文字の大きさと情報量との関係を考慮した情報の重要性の整序の検討資料にも活用することも有効です。ちなみに、食品表示一元化検討会における情報の重要性の整序に関しては、「できる限り多くの情報を表示させることを基本に検討を行うことよりも、より重要な情報(安全性関係)がより確実に消費者に伝わるようにすることを基本に検討を行うことが適切」とし、 またその他の表示事項の「重要性」は消費者によって異なることから、これまでの議論も踏まえつつ現行項目の検証し優先順位の考え方を導入することが適当であるとしています。
5 信頼の絆としての表示
食品の表示は、消費者が適切に理解し、食生活において積極的に活用することにより、機能を発揮するものです。また、表示を通して、食品の供給サイドの状況を理解することも意味があることです。
一方、表示するサイドの事業者にとっての表示は、知ってもらいたい情報を消費者に届けることができるきわめて有効な媒体でもあります。法令の方を見るにも増して消費者サイドを向き、消費者がどういう情報を求め、どういう方法によれば分かりやすい表示になるかを常に検討する姿勢は今後も必要と思います。
今後の加工食品の原料原産地表示制度により、消費者にとって、単なる産地に関する情報のみならず、生産者、食品企業等の置かれた状況についても理解が深まることで、食品表示が消費者と食品供給サイドとの信頼の絆になることを切に期待する次第です。