理事長からの食品表示便り


-加工食品の原料原産地表示制度に関する検討状況(2)-
名刺記載例

 前号に続き、加工食品の原料原産地表示に関する検討経緯につきまして、ご報告します。
第9回の消費者庁・農林水産省共催の「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」が10月5日に開催されました。
 当日は、当該制度に関するこれまでの検討経緯を踏まえた取りまとめ方針案が、事務局から示されました。

1. 制度の方針案
(1)  義務表示の対象となる加工食品及び原材料
 まず、義務表示の対象となる加工食品及び原材料については、「全ての加工食品について、重量割合上位1位の原料の原産地を義務表示の対象とする」という方針案が提示されました。なお、現行の食品表示基準に則して、以下の場合、 原料原産地表示は要しないこととしています。
・食品を製造し、又は加工した場所で販売する場合
・不特定又は多数の者に対して譲渡(販売を除く)する場合
・容器包装に入れずに販売する場合
 また、容器包装の表示可能面積がおおむね30㎠以下の加工食品にあっては、現行のとおり原料原産地表示を省略することができることとしています。
 なお、冠表示については、現行制度上も、その定義等が明確でないため、ガイドラインにより表示を普及するとしています。

(2)  義務表示の方法
 次に、義務表示の方法ですが、消費者ニーズに関するアンケート調査等を踏まえ、「国別重量順表示を原則とし、国別重量順表示が難しい場合には、 消費者の誤認を防止するための方法を明確にした上で、例外の表示を認める」としています。
 この場合、対象原材料の産地については、国別に重量の割合の高いものから順に国名を表示することを原則とするとともに、原産国が3か国以上ある場合は、現行の22食品群の表示方法と同様、3か国目以降を「その他」と表示することができることとしています。
(表示例)


(3) 例外としての「可能性表示」
 上記のように、国別表示が基本となりますが、国別重量順表示を行った場合に容器包装の変更が生じると見込まれる場合には、 過去実績等を踏まえた表示(可能性表示)を行うことができます。
 可能性表示とは、使用可能性のある複数国を、使用が見込まれる重量割合の高いものから順に「又は」でつないで表示できるようにすることです。この場合、原産国が3か国以上ある場合は、3か国目以降を「その他」と表示することができます。
 この例外の条件としては、対象原材料の過去一定期間における国別使用実績(新製品等の場合は使用計画)からみて、国別重量順表示を行おうとした場合に、産地切替えなどのたびに容器包装の変更が生じ、国別重量順の表示が困難であると見込まれる場合に認めることとしています。
(表示例)


(4) 例外としての「大括り表示」
 また、国別重量順表示を行った場合に、3以上の外国の産地表示に関して容器包装の変更が生じると見込まれる場合には、「大括り表示」を行うことができるとしています。
 大括り表示とは、輸入元が3か国以上の場合に「輸入」と括って表示できるもので、輸入品と国産を混合して使用する場合には、輸入品の合計と国産との間で、重量の割合の高いものから順に表示することです。
 この例外を認める条件としては、可能性表示と同様に、過去の一定期間の国別使用実績(又は使用計画)に基づきます。 (表示例)


(5) 例外としての「大括り表示+可能性表示」
 更に、「大括り表示」を用いても容器包装の変更が生じると見込まれる場合のみ、「大括り表示+可能性表示」を行うことができます。具体的は、3以上の外国を「輸入」と括って表示できます。その上で、「輸入」と「国産」を、使用が見込まれる重量割合の高いものから順に「又は」でつないで表示できます。これらも、原則として、過去の取扱い実績に基づき表示することになっています。これらの条件は、「可能性表示」及び「大括り表示」の場合に準じた要件を満たすことにより認められます。
(表示例)


(6) 例外としての「中間加工原材料の製造地表示」
 対象原材料が中間加工原材料である場合には、その原材料の製造地を「○○製造」と表示することにより、消費者に情報提供をしようというものです。
 これは、輸入した中間加工原材料を、単に細断したり、天地返しといった「加工」行為をしただけで「国産加工」と表示する場合があり、これが消費者によっては原材料も国産を使用していると誤認することがある等の背景があります。
 具体的には、対象原材料が中間加工原材料である場合に、当該原材料の製造地を「○○(国名)製造」と表示します。ただし、中間加工原材料である対象原材料の原料の産地が判明している場合に、「○○製造」の表示に代えて、当該原料名とともにその産地を表示することを妨げません。また、複数の製造国の中間加工原材料を混合して使用する場合には、「可能性表示」などの表示を認める条件や 誤認防止についての考えを準用します。
(表示例)


―中間加工原材料の原料の産地表示例ー


(7) 共通事項
@ 誤認防止
 使用割合が極めて少ない産地については、消費者の誤認が生じないよう、例えば、割合を表示する、又は、○○産と表示しないなどの表示方法を講じることとします。
A 現行の表示方法
 既に原料原産地表示が義務付けられている22食品群と4品目の現行の表示方法を維持することとしています。
B おにぎりののり
 おにぎりののりについては、現行の4食品に準じて原料原産地表示の対象とすることとしています。
C 表示媒体
 消費者は産地情報の入手に当たって、容器包装の表示を参考としている場合が多いことから、義務表示は容器包装への表示により行うものとしますが、補足的にインターネットなどにより詳細な情報開示を行うため、事業者は自主的な情報開示に努めるものとしています。
D 書類の備置き
  過去の使用実績等の根拠となる書類の備置き等を必要としています。
 その他、食品表示基準の改正に当たっては、施行時期について、一定の周知期間をおくこととするとともに、新たな原料原産地表示制度について、消費者教育の推進を行うこととしています。

2.主な論点
 上記の事務局提案に対して、様々な意見が出されましたが、中でも例外規定である「可能性表示」、「大括り表示」及び「中間加工原材料」が、消費者に分かりづらく、誤認に繋がるのではないかという意見が強く出されました。
 基本的には、食品表示は消費者が理解し、的確に活用されるべきもので、分かりやすいルールであることが求められます。今回のルールに基づく表示を消費者が見て、「又は」で繋ぐことが「可能性表示」であることを理解できるか、また「〇〇(輸入、国産)」の表示を見た場合に、○○という原材料が地球全体のどこかで生産されているという、意味のない表示に解釈されないか等に対する懸念です。
 一般的に、いずれのルールであっても誤認が全くないということはありませんが、当該表示ルールが施行される場合には、消費者が正しく理解するよう啓発に努める必要があることは言うまでもありません。
 なお、大括り表示の「地球全体」のような表示は、EUでは有機について「EU/NON-EU AGRICULTURE」と表示され、オーストラリアでも「from Local and Imported Ingredients」と表示されている例が見られます。
 上記のような懸念が生ずるのは、消費者に対して、今回のルールについて普及・啓発に努めた結果、本当に正しい理解のもとで活用されるかということが不確定だからです。
 すなわち、国等は新ルールの普及に努めることはもちろんですが、当該原料原産地表示に限らず食品表示ルールの理解度及び活用度を把握することが重要です。
 そして、それらの結果等を踏まえ、効果的な普及対策を講ずるとともに、新たな表示事項の増加に伴い文字の大きさの制約が増すことも考慮した場合、食品表示一元化検討会報告にもあるように、表示事項に優先順位の考え方を導入するといった検討に繋げることも必要と思われます。
 一方、例外表示が誤認しやすいという理由により、今回は、@全ての加工食品を対象、A国別の表示、及びB重量割合順で第1位の原料を対象という原則部分のみを義務化するという意見もあります。
 しかし、上記の例外表示をせざるを得ない加工食品を規制対象外とし、原料の輸入国(又は国産)が明確な食品を扱い個別国名の表示が可能な企業だけを規制対象とすることは、制度が成立しないことになります。
 こうした状況において、どのようなルールにするかは、11月2日の第10回検討会において議論がされる予定となっています。第10回検討会では、事務局から「中間報告案」が示される予定ですので、次号ではその結果を報告させていただくことにします。

(以上 平成28年10月31日現在)


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