食品表示検定活用事例

「食品表示検定」で理解が“点”から“線”、そして“面”になる

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ハウス食品グループ本社株式会社

  • 品質保証統括部 シニア・スペシャリスト  佐合 徹也 様

ハウス食品グループは我が国を代表する食品メーカーのひとつです。カレールウやレトルト食品など幅広いジャンルの食品を手掛けています。食品表示の取り組みは先進性に富み、実践的な活用法を展開しています。同社の品質保証統括部シニア・スペシャリストの佐合徹也氏に食品表示の取り組みを伺いました。

ハウス食品の幅広い商品展開 と 必要な表示作成能力

ハウス食品さんはカレールウの会社というイメージが強いのですが、他にも数多くの食品を手掛けていますね。

佐合 そうですね。一般消費者の方にはカレールウの会社というイメージが定着していますが、グループ会社を含めて幅広い商品を取り扱っています。幅広い商品を取り扱う中で、食品表示は法令改正で年々複雑化し、その対応には多くの苦労がありました。特に当社は、原材料の種類が多く、例えば、カレールウは、表示原材料が30~40種類を超え、ここに添加物表示・アレルゲン表示・原料原産地表示等が入り、表示に至るプロセスは非常に複雑になります。商品表示情報の管理は他社より複雑になっていると思います。

カレールウなどはスパイスやエキスがたくさん含まれていますね。特にエキスなどはいろんなものが含まれています。

佐合 その通りです。例えばエキス等には様々な添加物・アレルゲンが含まれており、構成原料の正確な情報入手から最終製品における含有量の算出へ、と情報を加工して必要があります。
こうした複雑な情報管理に対して、社として信頼できる情報システムが必要と考え、JFEシステムズ様と相談しながら、食品関連の総合データベース「Mercrius」を作り上げていったという経緯があります。2004年頃です。

Mercriusは食品の総合データベースシステムとして有名ですね。

佐合 食品表示に係る情報管理は非常に複雑です。原料・商品情報はもちろん、法律関連、運用情報などをMercriusで管理しています。
最初はいろんな失敗がありましたが、問題が顕在化することで課題が浮き彫りになり、また、やっかいなヒューマンエラーにも取り組んできました。もちろん、情報システムだけでなく、人材育成・力量確保にも力を入れました。「人」と「仕組み」のバランスが大切というのが結論です。

食品表示検定の役割と重要性

Mercriusの導入で、システム化が進み、人でも省力化されたのですか?

佐合 システム化を進めても、人の判断が必要なプロセスは残ります。例えば、商品開発の際、その商品がどんな食品か?どの品目に該当するのか?の判断は、法令知識を持った人の力になります。

その意味で、「食品表示検定」が役に立ってくるのですね。

佐合 当社では表示・商品規格書に関わる業務に携わる人は、「食品表示検定」の資格を持っています。基礎的な法令知識・調べ方等を見に付けるには必須です。その上で、当社製品に係る法令の詳細・解釈、当社のルールを習得していくことになります。
食品表示検定の話ですが、ある社員が中級試験から上級試験にチャレンジした際、「中級までは“点”の理解だった。上級を勉強することで“点”が“線”に、そして全体が見える“面”になった」 と話していました。私も、なるほど、と思いました。

食品表示はこれからどんな方向に進んでいくのでしょうか? 特に消費者への対応はこれからの要です。

佐合 事業者側は法令の遵守はもちろんですが、企業としては、いかにお客様に 「分かり易いパッケージ表示」を提供できるかが、ポイントだと思っています。例えば、アレルゲン表示では、法定表示とは別に、いわゆる「親切表示」を早くから展開しています。「これがあると買い物が早くなる」とアレルギー患者の方から言われたことが、心に残っています。
また、当社製品は、そのまま喫食するのではなく、「調理を伴う製品」が多いのも特徴です。イラストやデザインで直感的に調理方法が伝わるパッケージ等も追及しています。最近は、UCDA協会様と「分かり易い食品パッケージ」に取り組んでいます。

(インタビュー 2024年8月)