理事長からの食品表示便り

新たな食品表示基準の動向について
名刺記載例

日々アジサイの色が濃くなりつつ候、皆さまお元気でお過ごしのことと推察申し上げます。

さて、食品表示制度は、社会情勢の変化等に応じて常に変わってきました。現在、消費者庁で検討されている食品表示課題は、消費者基本計画に基づいています。すなわち、同計画において「検討」する旨明記されている個別の課題を対象にしています。既にこれまで幾つかの課題の検討を終え、その結果が食品表示基準やガイドラインなどに反映されてきました。

最近では、遺伝子組換え表示が有識者による検討会における検討を終え、本年3月末に報告書が公表されています。消費者庁では、現在同報告書等を踏まえ基準案作成の作業を行っており、基準改正案を本年の夏〜秋に消費者委員会に諮問する予定と思われます。

一方、諮問される食品表示基準案に対する審議を行うことを所掌している消費者委員会においては、これまでも当該分野における専門家からなる食品表示部会を設置してきました。

先般、第5次の食品表示部会の名簿が示されました(図表1)。今回、部会長が交代したものの、第4次の構成員が引き続き残った感がします。ちなみに、小生も継続したため、同委員として、皆様方にこの関係の情報をお伝えすることができると思います。

図表1 第5次消費者委員会食品表示部会委員名簿

同部会の第1回(通算で第44回目)の開催が6月6日に開催予定となっています。審議内容は、以下の3点で、各々その概要を説明します。

(1) 無菌充填豆腐

食品健康影響評価結果(平成30年1月23日府食第34号食品安全委員会委員長通知)を踏まえ、従来の冷蔵保存の豆腐とは別に、常温保存の豆腐に対応した新しい表示方法を定めるため、基準を一部改正するものです。

◎ 改正条項

基準別表第19(一般加工食品の個別的義務表示)他

◎ 留意事項

厚生労働省が改正を予定している食品衛生法第11条第1項の規定に基づく無菌充填豆腐の規格基準と整合を取る必要があるためです。

◎ 「豆腐の規格基準改正に係る食品健康影響評価結果(平成30年1月23日府食第34号食品安全委員会委員長通知)」(抄)

厚生労働省からの諮問を受け、豆腐の規格基準では冷蔵保存することとされている無菌充填豆腐について、その保存基準を常温保存に変更した場合の食品健康影響評価を実施しました。

厚生労働省が条件として示す製造工程を踏まえて製造された無菌充填豆腐は、常温下で長期間保存及び流通することが想定されることから、ハザードとなり得る対象病原体として特定したボツリヌス菌及びセレウス菌が当該食品の最終製品に残存した場合、人に健康被害を引き起こす可能性があります。

「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針」(平成26年10月14日付け食安発1014第1号。以下「管理運営基準指針」という)に基づき十分に衛生管理されることを前提として、かつ、厚生労働省が条件として示す殺菌、除菌等の製造工程を経た場合、ボツリヌス菌及びセレウス菌は死滅し、最終製品に残存しないと考えられることから、現在、豆腐の規格基準に基づき冷蔵で保存されている無菌充填豆腐について、冷蔵保存から常温保存に変更した場合のリスクに差があるとは考えられないと結論付けました。

なお、大豆の浸漬工程については、耐熱性が高い毒素を産生する細菌を、毒素産生に必要とされる菌数まで増殖させないように適切に管理することが必要です。

また、120℃・4分間加熱又はこれと同等以上の殺菌条件を確保するための工程管理にはモニタリングが必要であり、管理措置が適切に講じられていないと認められたときには、速やかに改善措置を実施することが必要です。

容器包装には、種々の物理的影響に耐え、破損等による微生物の汚染を防止できるものを用いること、並びに冷蔵保存が必要な豆腐には冷蔵が必要である旨及び常温で保存できる豆腐には常温保存ができる旨を消費者等が明確にわかるように表示することに留意する必要があります。

◎ 食品健康影響評価(食品表示に係る部分を抜粋)

消費者等が保存方法を誤解しないように、冷蔵保存が必要な豆腐には冷蔵が必要である旨及び常温で保存できる旨及び常温で保存できる豆腐には常温保存ができる旨を消費者等が明確にわかるように容器包装に表示すること。

◎ 無菌充填豆腐に係る食品表示基準の一部改正の考え方

上記のように、豆腐の規格基準改正に係る食品健康影響評価結果(平成30年1月23日府食第34号食品安全委員会委員長通知)を踏まえ、食品衛生に係る無菌充填豆腐の規格基準の改正が行われる予定であることから、一般加工食品の個別的義務表示事項を定めた基準別表第19等の規定を改正することになります。

具体的には、基準別表第19における常温保存可能な乳(いわゆるLL牛乳)の規定を参考として検討されます(図表2参照)。

図表2 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)別表第19の改正案(抄)

(2)防かび剤(フルジオキソニル)

防かび剤(フルジオキソニル)については、用途名と物質名の併記が義務付けられていることから、その使用対象食品拡大に伴い、基準を一部改正するものです。

◎ 改正条項

基準別第24(生鮮食品の個別的義務表示)他

◎ 留意事項

厚生労働省が改正を予定している食品衛生法第11条第1項の規定に基づく添加物の規格基準と整合をとることが必要です。

◎ 防かび剤(フルジオキソニル)とは

用途は「防かび剤」で、フェニルピロール系の化合物であり、糸状菌の原形質膜に作用し、アミノ酸やグルコースの細胞内取り込みを阻害することにより殺菌効果を示します。

諸外国での状況は以下の通りです。

  • ① FAO/WHO合同残留農薬専門家会議(JMPR)の評価
  • 2004年にフルジオキソニルの一日摂取許容量(ADI)を0.37mg/kg体重/日としています。

  • ② 諸外国の使用状況
  • 米国では、収穫前の農薬として、豆類、かんきつ類、綿実等に使用されています。また、収穫後の防かびを目的として、パイナップル、塊茎及び球茎状野菜、アボカド等のトロピカルフルーツに対し、使用が認められています。欧州連合(EU)では、収穫前の農薬として、ぶどう、いちご、トマト等に使用されています。

    我が国では、平成8年に農薬登録され、収穫前の農薬として稲、トマト、キャベツ等に使用されています。食品添加物としては、平成23年に指定され、キウィー、かんきつ類(みかんを除く)等に使用が認められています。

    食品安全委員会における食品健康影響評価結果としては、1日摂取許容量を0.33mg/kg体重/日、急性参照用量を2.5mg/kg体重と設定しています。

◎ 防かび剤(フルジオキソニル)に係る食品表示基準の一部改正の考え方

上記のように、食品衛生法に基づく防かび剤(フルジオキソニル)の使用基準が改正され、その対象食品にアボカド、パイナップル、パパイヤ、ばれいしょ及びマンゴーが追加される予定であることから、使用された防かび剤(フルジオキソニル)が適切に表示されるよう、一般生鮮食品の個別的義務表示事項を定めた基準別表第24等の規定を改正することになります。

具体的には、基準別表第24における「あんず」、「おうとう」、「かんきつ類」等の規定を参考として検討されます(図表3参照)。

図表3 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)別表第24の改正案(抄)

(3)ボロニアソーセージ(Mortadella Bologna(モルタデッラボローニャ)の一般的な名称)

特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(以下「GI法」という)に基づき、保護対象とされる予定の「Mortadella Bologna(モルタデッラボローニャ)」について、ボロニアソーセージと名称表示ができるよう、基準を一部改正するものです。

◎ 改正条項

基準別表第3(基準上の用語の意義)

◎ ボロニアソーセージ(Mortadella Bologna(モルタデッラボローニャ)の一般的な名称)
 に係る食品表示基準の一部改正の考え方

基準別表第3において、基準上の用語の意義として「ボロニアソーセージ」が規定されている一方で、GI法第23条第1項の規定に基づき「 Mortadella Bologna(モルタデッラボローニャ)」(以下「GI産品」という)が保護対象とされる予定となっています。

両者は同一のものを指すと解されていますが、次で示すように両者の要件を比較すると完全に一致しているわけではないため、GI産品が「ボロニアソーセージ」と名称表示できない場合があります。

そのため、今般、GI産品について、「ボロニアソーセージ」と名称表示ができるよう、基準上の用語の意義を定めた基準別表第3の規定を改正することになっています(図表4参照)。

◎ 基準別表第3の規定に基づく「ボロニアソーセージ」とGI法第23条第1項の規定に
 基づく「 Mortadella Bologna(モルタデッラボローニャ)」の違い

♦基準別表第3の規定に基づく「ボロニアソーセージ」

基準別表3の中欄のソーセージ(下欄1又は3に規定するものに限る)のうち、牛腸を使用したもの又は製品の太さが36ミリメートル以上のもの(豚腸を使用したもの及び羊腸を使用したものを除く。)をいいます。

♦GI法第23条第1項の規定に基づく「 Mortadella Bologna(モルタデッラボローニャ)」

イタリアのエミリア・ロマーニャ州等の地域において数百年にわたり培われてきた熟練者の技術力により、定められた生産行程に基づいて生産され、以下のような特性及び生産方法であるものをいいます。

①特性

本産品は豚肉から作られるソーセージで、多くは楕円形または円筒形をしています。ソーセージケーシング(皮)は、天然又は人工の物を用い、長い期間をかけて製造されます。本産品は堅く締まった外観で、弾力がなく、切断面は滑らかかつ均一であり、明るいピンク色をしています。真珠のように白く四角い脂肪組織が、一切れ当たり全体の15%以上なければなりません。

②生産方法

豚の筋肉組織及び喉部分の高品質の脂肪のみを使用します。砂糖及びいくつかの添加物が使われることもありますが、定められた少量のみです。タンパク質は加えてはなりません。本産品の製造には以下の段階があります。

・肉部分の調整、薄切りベーコンの調整、混合、腸詰め、加熱調理、冷却。

図表4 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)別表第3の改正案(抄)

なお、上記3点の改正に伴う施行は公布日が予定されています。

(平成30年5月31日現在)

-遺伝子組換え食品の表示制度の動向について ―その2 検討結果と今後のスケジュール― (平成30年3月31日)
-遺伝子組換え食品の表示制度の動向について ―その1 消費者の表示に対する意識― (平成30年2月28日)
-食品表示はどのように変わっていくのか?(その2)- (平成29年12月28日)
-食品表示はどのように変わっていくのか?(その1)- (平成29年11月27日)
-加工食品の原料原産地表示基準の答申及び施行に関しての留意点- (平成29年8月25日)
-加工食品の原料原産地表示基準に関する諮問に対する答申書案の審議動向- (平成29年8月1日)
-加工食品の原料原産地表示基準の審議動向- (平成29年7月3日)
-分かりやすい表示と情報の重要性の整序- (平成29年4月30日)
-加工食品の原料原産地表示に関する食品表示基準改正のポイント- (平成29年3月30日)
-若年層における食品表示教育の現状- (平成29年3月1日)
-食品表示制度と食育政策- (平成29年2月1日)
-新年のご挨拶 新たな食品表示基準等への対応の年に- (平成29年1月1日)
-加工食品の原料原産地表示制度に関する検討状況(中間取りまとめ)- (平成28年11月30日)
-加工食品の原料原産地表示制度に関する検討状況(2)- (平成28年10月31日)
-加工食品の原料原産地表示制度に関する検討状況(1)- (平成28年9月29日)
-「理事長からの食品表示便り」コーナーの創設に当たって- (平成28年9月1日)


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